The Show Must Go On!!〜映画「シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい!」

皆様、生オーケストラ演奏がある舞台をご覧になるのはお好きですか?

私は大好きです。

 

 

舞台が始まる前にこういうチューニングの音を聞くの、好きですか?

私は大好きです。

管楽器の音、弦楽器の音が鳴って客席が静まり返って、幕が上がる瞬間って人生の最高の瞬間の一つだと思います。

そういうのが好きな方、ぜひご覧になってください。

シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい!」

 

物語は、シンプル。

スランプの売れない詩人・劇作家であるエドモン・ロスタン。

自分を買ってくれている大女優サラ・ベルナールが名優コンスタン・コクランに口を聞いてくれることになったが、サラは「2時間後にコクランに新作を持っていけ」という。

出来てもいない"新作"を考え、まっさらなノートをもち近所のカフェで頭を抱えていたが、気の利く店主との話の中でヒントを得て「シラノ・ド・ベルジュラック」を主人公にしようと決めコクランに会いに行く。

喜劇など書いたことがないエドモンはコクランの「喜劇がいい」という言葉のままに物語を考えていくが…

 

ままならない現実とエドモンが描く「シラノ・ド・ベルジュラック」の作品世界をリンクさせて、「シラノ・ド・ベルジュラック」制作秘話を描く本作。

どこまで本当かはちょっと実在のエドモン・ロスタンのことを知らないので分からないけれど、「スランプで書けない劇作家」が沢山のトラブルを乗り越えて初日を迎えるまでの裏話を描いています。

借金まみれの主演俳優、文句ばかり言う年増のヒロイン女優、衣装係に熱を上げて主人公に恋の相談をするハンサムだけど間抜けな友人俳優…などなど登場人物たちのクセも強ければ、起こるトラブルも本当に色々とつぎからつぎへとやってきて「これは本当に初日の幕が上がるのか!?」と見てるこっちがハラハラドキドキしてしまうという具合。

普段舞台を見ている人なら人でごった返す舞台裏が見られたり、台本が上がらなくて作家や役者が右往左往する様や、舞台機構のトラブルを見て「あぁー…ある…」みたいになったり出来て楽しかったりもする。そのあるあるは本来はあんまりあってはならないやつなんだけれど(笑)

 

基本は「喜劇」であるけどロマンスもあり、ヒューマンドラマもあり、歴史物でもあり…みたいに全部載せで最初から最後まで飽きることなく楽しめるのが本当にすごい。この映画がアレクシス・ミシャルク監督の監督デビュー作だとパンフで知ってびっくりしました。物語としてもすごく良く出来ている…この映画を撮る前に、この作品を舞台で上演していたのもパンフで知りました。

YouTubeで劇場が上げていた舞台の動画も見ましたがこれは舞台と映画をぜひ見比べたい…きっと舞台もすごく面白いというか転換とかどうしているのだろう…いつか見られたら嬉しいと思います。

 

今年はコロナで劇場にフルで人を入れられなかったり、なかなか劇場に足を運ぶこともままならなかったりしたので、こういう「劇場裏話」みたいなお話が見られることがまずすごくよくて、作中でも「劇場にお客さんがたくさん入っている」場面が映ったりするとそれだけで幸せな気持ちになれるし、主人公は何が起きても「3週間後に初日を迎えるのにまっさらな台本」を書き続けるし、俳優たちは舞台に立てなくなりそうでも舞台に立とうとする…そういう姿を見られることも嬉しくて。

舞台って技術が発達した現代でも基本的にはすごくアナログなエンタメの一つじゃないですか。ロボットに台本は書けないし、人間が生身で板の上に立って演じるという基本がある。

客席がいて、反応があって進化するものもあるし、そのアナログでより良いものを作ろうと足掻く人たちは誰がどんなトラブルを運んできてもその歩みを止めることはできない。これは舞台に限らず、なにかを作る人なら共感ができる部分でもあるかなあと思うんですけど。

どんなに色々なことがあっても「The Show Must Go On」はあの頃から今まで変わらない。

「何事もなく初日の幕が上がる」ことって本当に特別なことなんだなあと特に感じている2020年だからこそ、この作品は私のような人間の心に刺さるんだと思います。この作品自体は2018年の映画なんですけど、今年日本の映画館で公開してくれてありがたいなと思いました。

シラノ・ド・ベルジュラックの初演(今回の作中で描かれている)は初日から500日間400回以上も上演され続けたらしいけれど、作中でも登場人物が言っていた通り「100年後も残る」作品であり、今年はこれから宝塚歌劇団でも上演される作品なのでシラノ・ド・ベルジュラックの入門編にも本当にいい作品だなぁと思います(私も元の戯曲を読みたくなりました)

 

見てる最中に何度も心に刺さる場面や言葉もあってちょっと涙くんだりして、まぁそういうお話なのでできすぎてるところもあるのかもしれないですけど、やっぱりハッピーエンドは最高だし、これ大規模公開じゃないんで地方の方とか見るの大変かなとも思うんですけどできるだけ沢山の人に見て欲しいなと思って書き散らしてしまった…

つらい作品に疲れた人、舞台や映画好きなみなさんにこの素敵な作品が届きますように…!!